秋メニュー仕込み計画|原価・製造量・シフトを同時設計する方法
秋メニュー導入前に「原価・製造量・シフト」を同時に決める
秋メニューの仕込みで多くの現場が失敗するのは、商品を決めてから原価を計算するからです。レシピが固まって試作が終わったあとに「思ったより原価が高かった」と気づいても、価格を下げるか材料を変えるしか手がなく、どちらも利益を削ります。
正しい順序は逆です。売価と目標原価率を先に決め、そこに収まるレシピを作る。さらに製造量とシフトをセットで組むことで、人件費込みの本当の利益が見えます。この記事では、秋メニュー切替のタイミングで使える3ステップの計画手順を解説します。
ステップ1|売価と目標原価率から「使える原価」を逆算する
まず粗利目標を決める
秋商品の価格を設定するとき、多くの店が「材料費を足して掛け率をかける」やり方をします。しかしこれでは変動費(材料費)しか見ていません。固定費と人件費を乗せると、実際の利益はずっと薄くなっています。
計画のスタートは次の問いから始めてください。
- この商品を月に何個売るか
- 月の固定費(家賃・光熱費など)と人件費のうち、この商品に割り当てる分はいくらか
- その上でいくら粗利を残したいか
使える材料費を計算する
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 想定売価(税抜) | ¥380 |
| 目標原価率 | 30% |
| 1個あたり使える材料費 | ¥114 |
| うち包材費 | ¥18 |
| 使えるレシピ原価 | ¥96 |
この¥96を上限にレシピを組みます。試作の前に数字が決まっているので、材料を選ぶ段階から原価を意識できます。
[要確認: 業種や商品カテゴリによって一般的な原価率の目安は異なります。上の数値は例示です。自店の損益構造に合わせて設定してください。]
ステップ2|製造量を「売れる数」ではなく「作れる数」で決める
秋メニューが失敗しやすい製造計画の落とし穴
新商品は「どれだけ売れるか」で製造量を決めがちです。しかし小規模な製造小売では、作れる量が売れる量を規定します。オーブンの台数、人の手、包材の調達量が上限です。「思ったより売れたのに材料が足りない」「大量に仕込んだのに売れ残った」の両方が起きるのは、製造キャパシティの計算を省略しているからです。
製造量を決める3つの数字
- 1バッチの出来高:レシピ1回の製造で何個できるか
- 1日に回せるバッチ数:オーブン・鍋・人手から算出
- 販売可能日数:週に何日その商品を作るか
たとえばモンブランタルトを1バッチ12個・1日2バッチ・週5日製造するなら、週の最大製造量は120個です。この数字を先に出しておくと、材料の発注量も仕込みスケジュールも自動的に決まります。
損益分岐点を計算しておく
製造量が決まったら、固定費を回収できる最低販売数(損益分岐点)を確認します。
損益分岐点 = 固定費配賦額 ÷(売価 − 変動費)
たとえばこの商品に月¥30,000の固定費を割り当て、売価¥380・変動費(材料費+包材費)¥114なら、損益分岐点は約113個です。週120個作れるなら月480個が上限なので、113個は現実的に達成できる数字として計画を立てられます。
[要確認: 固定費の配賦方法は店舗の損益構造によって異なります。上の計算式は簡易的な例です。]
ステップ3|製造量からシフトを逆算する
人件費を「後から足す」のをやめる
原価計算でよくある落とし穴が「材料費だけで原価率を出す」ことです。製造業では人件費が製造原価の大きな割合を占めます。秋の新商品は作業工程が増えることも多く(栗の下処理、マロンクリームの製造など)、工数が読めていないと利益が消えます。
工程ごとの所要時間を先に見積もる
| 工程 | 作業時間(1バッチ) | 担当 |
|---|---|---|
| タルト生地仕込み・焼成 | 90分 | 製造スタッフ |
| マロンクリーム製造 | 45分 | 製造スタッフ |
| 仕上げ・絞り | 60分 | 製造スタッフ |
| 包装・ラベル貼り | 30分 | パート |
| 合計 | 225分(3.75h) |
1バッチ3.75時間かかるなら、1日2バッチで7.5時間の製造工数です。これに時給をかけると人件費が出ます。材料費と合わせた製造原価を先に計算してから売価を決めると、利益の見通しがはるかに正確になります。
シフトへの落とし込み
製造量と工数が決まれば、週の製造スケジュールを組めます。
- 製造日:火・木・土(週3日)
- 製造スタッフ:8:00〜15:00
- 包装担当:13:00〜16:00(材料調達日と製造日をずらし、仕込み材料の発注タイミングも確定)
シフトを決める前に製造工数が出ているので、「人が足りなくて仕込めなかった」を防げます。
仕込み計画・原価管理を道具でまとめる
レシピに材料と工程を登録しておくと、製造数を変えたときに必要な材料量・包材量・人件費が自動で展開されます。Coboard(コーボード)のような食品製造向けのツールでは、レシピから仕込み量を計算し、そのまま製造記録と在庫の差引ができます。「今日何個作るか」を入力するだけで、各材料の使用量・包材の消費量が出るため、発注タイミングの管理にもつながります。
秋メニューのように新商品を複数同時に立ち上げるときは、商品ごとに製造数・材料・工数を一元管理できると、シフトと発注の調整が格段に楽になります。
まとめ
秋メニューの仕込み計画は「商品を決める→試作→価格を決める」ではなく、「売価・原価率を決める→製造量を決める→工数からシフトを組む」の順が正解です。
- 材料費だけで原価を出さない:人件費を含めた製造原価で利益を設計する
- 製造量はキャパシティから逆算:「売れる数」ではなく「作れる数」を先に確定する
- シフトは工数の計算結果:製造量と工程時間が決まれば人の配置も決まる
この3ステップを秋メニュー切替前に終わらせると、導入後に原価や人件費で慌てることがなくなります。
